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住民税で所得税と異なる課税方式を選択するには

上場株式等の配当の申告方式について

所得税と住民税で別々の選択ができることが

明確化されて初めて迎えた確定申告シーズン

「総合課税の配当所得を申告不要とする」住民税申告書を提出しました

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所得税と住民税で異なる課税方式、とは?

平成29年度税制改正で、特定上場株式等の配当所得や上場株式等の譲渡(源泉徴収がある特定口座)に係る所得について、所得税と異なる課税方式により個人住民税を課税できることが明確化されました

特定上場株式等の配当所得等を含めた所得税の確定申告書が提出されている場合であっても、その後に個人住民税の申告で記載された事項をもとに課税できることなどを明確化する改正がなされ、申告者の判断の下、所得税と異なる課税方式(申告不要制度適用、総合課税、申告分離課税)を選択することができるようになっています

 

通常、個人住民税と所得税については、所得税の確定申告書のみを提出することによりその申告実務は完了しています

しかし、個人住民税の納税通知書が送達される日までに、確定申告書とは別に、個人住民税の申告書を提出することにより、特定上場株式等の配当所得や上場株式等の譲渡所得について、所得税と異なる課税方式(申告不要制度適用、総合課税、申告分離課税)を選択することができるのです

ただし、既に個人住民税の納税通知書が送達されている場合には、その納税通知書に係る年度分の個人住民税について遡及して課税方式の変更を求めることはできません

具体的にいうと、平成28年の所得をもとに計算する平成29年度分の住民税について、さかのぼって課税方式の変更を求めることはできません

しかし、平成29年の所得をもとに計算する平成30年度分の住民税については、納税通知書が送付されるのは平成30年6月頃なので、それまでであれば、所得税で確定申告をした上場株式等の配当所得や譲渡所得について、所得税と異なる課税方式を選択することが出来ます

たとえば、所得税は総合課税(又は申告分離課税)を選択し、住民税は申告不要制度を選択する、といった選択ができるのです

 

 

「申告不要」を申告する申告書

今回、選択したのは、上場株式等の配当所得について、所得税は総合課税・住民税は申告不要制度とする課税方式です

源泉徴収ありの特定口座に上場株式等の配当所得のみがあった場合、その配当所得からは所得税が15.315%、住民税が5%天引きされているので、この所得に関しては所得税で確定申告をしなくても大丈夫です

しかし、この配当所得を総合課税で申告しても、所得に対する税率が5%の場合(課税所得金額が195万円以下)、5%の課税で済むことから、15.315%源泉徴収された所得税額の還付をうけられます(配当の種類によっては配当控除という別の控除もうけられます)

しかし、5%で課税されている住民税についても、所得税同様に総合課税とすると、住民税は10%で課税されてしまうのです

これを回避するため、所得税は総合課税を選択するけれども、住民税ではこの配当所得は申告しない(特定口座での特別徴収で課税関係を終了させる)ことを選択する必要があります

 

「申告しない」ことを申告するなんて、と矛盾を感じつつも、この場合の適切な住民税の申告方法を確認してみました

 

自治体によって異なります

結論からいうと、異なる課税方式を選択できることが平成29年度税制改正で明文化されましたものの、平成30年度の住民税申告での自治体の対応は様々です

まず、今回の提出先となった鎌倉市の場合、「平成30年度市民税・県民税申告書」内でそれらしい申告ができる箇所はみつかりませんでした

鎌倉市に確認したところ、この場合(所得税は総合課税、住民税は申告不要を選択)であれば

  • 「市民税・県民税申告書」の表面右下の備考欄に、所得税と異なる課税方式(申告不要制度、総合課税(配当のみ選択可)、申告分離課税)を選択することを記入する(たとえば「配当所得について住民税では申告しない」など)
  • 「市民税・県民税申告書」の備考欄以外は数字などを記入しなくてよい(上部の名前や住所のみ記入)
  • 提出した所得税の確定申告書の控え特定口座年間取引報告書のコピーを「市民税・県民税申告書」と一緒に提出する
  • できれば3月15日までに提出を

とのことでしたので、こんな感じで「備考」欄に記入しました(…住民税では申告しない

*総合課税とした配当所得の金額も書いてあるとよい、とのことでしたので、このあと配当所得の金額をカッコ書きで追記しました

 

お隣の横浜市では、やはり申告書の右下にチェック欄があり、所得税と異なる課税方式を選択する場合には☑をいれます(☑後どうするかも細かく書いてあります)

 

もっと簡単な方法として、住民税について、所得税と異なる課税方式を選択する場合は、「上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書」を提出するだけでよい自治体もあります

上場株式等に係る譲渡所得等・配当所得等の住民税課税方式の選択|練馬区公式ホームページ

 

これはズバリで間違いが少なそう!ちょっと温度差を感じますね

今後はこの「住民税申告不要等申出書」方式が広まるのではないかしら…

 

さて、「市民税・県民税申告書」備考欄に「申告しない」と記入し、確定申告書控えと特定口座年間取引報告書のコピーを添えた住民税の申告書、できれば3月15日までということでしたので、提出しましたよ!

初めての「申告しない」申告書! 今後はよりわかりやすくなりますように…

 

***編集後記***

住民税のはなしが続いてしまいました

見落としがちですが、あとから質問がくるのが住民税です

 

 


・・・このブログ記事の内容は、投稿時点での法律や状況に基づいて記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。・・・

このブログを書いた税理士 小柳志保のプロフィール

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